本研究では、電子デバイスに用いられるSi半導体と光デバイスに用いられるGaN系半導体を一体化する際に派生して生ずる基本的な課題に関して基礎的研究を実施した。本研究において解決しなければならない最も重要な研究課題は、(Si/GaN)ヘテロ接合界面の制御法の確立である。特に、ヘテロ接合界面には、「半導体の格子定数差に起因して生ずる残留歪み」と「半導体の熱膨張係数差に起因して生ずる残留歪み」とがあることに注目し、ヘテロ界面における残留歪みの制御法や除去法を検討した。 その結果、「多重バッファ層(超格子構造層)」を導入する事が一つの有効な方法であることを新しく見いだした。この成果は、特許出願(1件)として結実した。この「多重バッファ層構造」をSiと窒化物系半導体界面に適用し、ヘテロ界面の制御を試みた。その結果、「多重バッファ層」上に成長したGaNあるいはGaI nN結晶の品質は、SiC基板上に成長した結晶の品質と遜色のない事が明らかになった。また、このようにSi基板上に発光ダイオードを製作し、青色からグリーンの波長域での電流注入による発光が初めて実現された。 このようにSi基板上に成長した窒化物半導体によって発光ダイオードが実現できるようになった主な理由は、「多重バッファ層構造」を導入することで、ヘテロ界面に起因して発生する格子欠陥の内、「らせん転移」が主に軽減できることであり、この結果、欠陥密度を反映するエッチピット密度を単位断面積あたり10^9〜10^<10>[1/cm^3]から10^6〜10^7[1/cm^3]にまで減少できることが判明した。
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