研究概要 |
今年度は素子設計と評価装置の立ち上げに重点をおいた。従来の量子閉じ込めシュタルク効果を利用した変調器では、速度は素子容量によって制限を受け、容量低減のためには活性層の厚さを厚くしなければならず、層に垂直な方向に電界を印加するため動作電圧が増大するという欠点があった。本研究では閉じ込めの弱い横方向に電界が印加するので従来より約1桁小さい電界強度で励起子吸収変化が生じ、素子容量も層内にPN接合が形成でき低減可能で、低電圧化および高速化に有利となる。半絶縁性基板上にP型とN型電極を形成して導波路の幅を2umとした場合、電圧2Vは電界強度10kV/cmに相当し、十分な消光比が達成できる吸収係数変化となり、所要駆動電圧は入手可能な電気回路で動作可能なレベルとなる。さらに、素子容量は導波層の厚さに依らず幅にのみ依存するので従来に比べ極端に減少できる。また、光吸収に伴う生成キャリアはヘテロ界面を多数回通過する必要がないため、本質的に速くなることが予想され、かつ、高入力光入射に伴う各種の不具合(吸収飽和等)も解決できる可能性がある。予備的な実験として通常の電気的な方法では発生不可能な時間幅の狭いパルスをパルス光の照射された高速光検出器(単一走行キャリアフォトダイオード)により発生し、この電気パルスを高速光変調器に加え吸収形変調器特有の非線形を利用して、透過光をこの電気パルスで変調することにより光で直接光を制御することに成功している。光を効率よく変調器に収束させるべく単一モードファイバをモジュール化して実験の効率化、安定化を図った。ただし、埋込み用LPE装置の立ち上げが予想以上に手間がかかりまだP,Nの埋め込みに成功していない。
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