インターネット、移動体通信の爆発的な普及など本格的なマルチメデア社会の到来に対処すべくマイクロ波フォトニクスの発展が期待されている。変調周波数がミリ波に達する光変調器は現在、帯域幅と動作電圧は矛盾関係にあり、この限界を克服することが緊急の課題である。 本研究では新しい動作原理に基づくミリ波帯で動作する実用的な光変調器の設計、原理確認、試作が目標となる。量子井戸層に平行に電界を印加し、かつ、横方向PIN構造を採用する本変調器では、量子閉じ込めの弱い横方向に電界を印加するため、従来の量子閉じ込めシュタルク効果を利用した変調器に比べ1桁以上小さい電界強度で励起子吸収変化を生じ、素子容量も約1桁小さくなって、消光比20dBを得るのに必要な素子長が短くなり、3dB帯域幅は従来のトップデータを大きく凌駕する200GHzを越えることがわかった。さらに、特筆すべきは負チャープ化が比較的低電界で得られることである。すなわち、高速・大容量光ファイバ伝送においては変調器の負チャープ化が重要な課題で、従来の吸収型強度変調器では、チャープ特性はバイアスを深くして伝搬損を増加しないと負にならなかった。本素子では速度、駆動電圧の改良ばかりでなく比較的小さい伝搬損でもチャープが負になることが見積もられ、従来にない新しい性能が期待できることがわかった。また、半導体変調器固有の問題であったシングルモード光ファイバとの大きな結合損も、本素子では量子井戸層厚を素子容量とは独立に設計できるので低減できる見通しが得られた。これらの結果は国際会議IPRM'01において発表予定である。これら変調器の改良を踏まえて本来の超高速・低駆動電力光スイッチの研究に取り掛かっている。今後は素子の試作により原理検証を行っていく。 さらに、変調器の伝搬損を含めた挿入損全体の解析を光吸収電流と消光比のデータから簡単、容易にできる方法を提案、実証した。
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