研究概要 |
微小電子源を陰極とする電子銃により最高100keVまでのビームを生成し、その収束限界を調べるとともに、スミスーパセル光放射の実験に着手することを目標とした。製作した電子銃は陽極・陰極間距離が50mmの3極型であって、電子ビームは陽極板に設けた幅1mmのスリットを通して取り出される。 加速電圧の上昇に関しては、まず安定化直流電源を用いて40kVまで、次いで小型のヴァンデグラフ静電発生器により100kVまでの電圧を電子銃に印加した。高い加速電圧においては往々にして印加開始時の放電による微小電子源の破損が生じた為に、現在は主に80kV以下の電圧で運転を行っている。 ビームの収束状況は、CCDカメラを介して蛍光板の発光像をコンピューターに取り込み、画像処理することによって把握した。640個の電子放出ティップが直径0.2mmの円内に分布している微小電子源を用いた場合、加速・収束された数μAのビームの直径も0.2mm程度であった。この値は電子軌道のシミュレーション結果と一致している。ティップ数が少ない小面積の微小電子源を用いればビームは更に細くなる筈であるが、測定結果は矢張り0.2mm程度であった。これは陰極形状の軸非対称性に帰因される。 陽極スリットの直ぐ下流に1,800本/mmの回折格子を置き、電子ビームがその表面を掠めるようにすると、そこで可視光が発生した。回折格子上方で観測された光の波長は、電子エネルギー35keV-45keVに対して740nm-650nmと変化した。これはスミスーパセル放射の理論と極めて良く合致する結果であって、電磁波発生の分野における微小電子源の実用可能性を示唆している。
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