研究概要 |
1.微小電子源により生成される電子ビームの特性 シリコンを基盤とする微小電子源陰極から生成した電子ビームの性質を、蛍光像の画像処理を通して調べた。2段ゲート型微小電子源のティップから出る各ビームレットの規格化エミッタンスは10^<-9>πmrad台と測定された。半径0.1mmの陰極から出たビームは、半径約0.1mmのスポットに絞られた。 2,エネルギー120keVまでのビーム加速 微小電子源を陰極をする3極構造の小型電子銃を製作し、先ず安定化直流電源を用いて45keVまでの電子ビームを生成した。次いで公称出力350kV10μAの小型ヴァンデグラフ静電発生器によって更に高エネルギーへの加速を行った。陰極柄を通す絶縁管として定格30kVのセラミック製絶縁管4本を用い、またコンピュータによるヴァンデグラフ静電発生器の出力電圧安定化を施した結果、目標とした100keVを超えるエネルギー120keV(電流値3μA)までの安定な電子ビームを生成した。 3.スミス-パセル放射実験 回折格子表面に沿って電子ビームを伝搬させ、放射されるスミス-パセル光を格子上方80度の向きで調べた。広範な電子ビームパラメタについてデータを得る為に、パソコンの指令によって分光器を走査し、各波長の光の強度を加速電圧及びビーム電流とともに取り込んで処理する、自動走査分光系を開発した。これを用いて、15-60keVの電子エネルギーと350-750nmの可視全波長領域を網羅する形で測定を行った結果、スミス-パセル理論と良く一致する光を放射次数-2から-5に亘って検出した。電子ビームの電流値を10μA、更に1μAに低くしても、スペクトルのピークが明瞭に観測された。本実験で見出された主な問題点は、回折格子が電子衝撃によって損傷を被ることであって、微小電子源並びにそれを陰極として生成される電子ビームは電磁波発生等への応用可能性を有すると結論される。 4.微小電子源のレーザー光照射 100mWのYAG2倍波レーザーで微小電子源を照射し、電界放出電流値が増加することを確認した。
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