高速な動作が実現できる全光ルーティング処理を実現するためには、送り先アドレスの認識、ヘッダの書換え、ルーティング用内部アドレスの付加、セル衝突処理などの信号処理を、電気・光変換を介さずに行う必要がある。本研究では、光セルのヘッダ部分の特定ビット列を書き換える全光回路について研究を行い、次の成果を得た。 1.ビット列書換え回路の特性 置換するビット列の位置と長さ情報に基づき、伝送されてきたセル中の所望のビット列をローカルに生成したビット列で置換する全光回路を考案した。この光回路は、置換ビット列の長さとビット列中で挿入すべき位置に応じた制御用の光信号を生成する光回路と、この制御信号によって時間多重分離を実行する光スイッチング素子で構成される。考案した光回路の動作特性をシミュレータによって解析し、回路の構成に用いる光素子の透過率、消光比、応答速度などの動作特性がビット列置換動作に与える影響を明らかにした。また、光回路と受信器を適当にモデル化して数値解析し、光素子の特性によって不完全な置換が行われた場合に発生する受信符号誤り率特性を明らかにした。 2.ビット列置換用全光スイッチの試作 ビット列を書換えるために必要な時間多重分離用全光スイッチを試作し、基本的な動作実証を行った。全光スイッチは、GaInAsP/InP導波路を用いてグレーティング装荷形非線形方向性結合器により形成されており、GaInAsP導波層中の光カー効果による高速応答が期待できる。試作素子において、制御光の印加によって信号光パルスを異なる二つのポートに多重分離できることを示した。
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