研究概要 |
1.データ圧縮において,圧縮されたデータ列を前と後の両方向から復号できる構造の符号化法は実用上の面からも有用である.そのような符号は語頭語尾符号と呼ばれるが,通常の語頭符号には見られない構造を保持している.(1)そのいくつかの性質を論文"A Note on the Fix-Free Code Property"で明らかにした.(2)論文"Coding of Ordered Trees"は離散的情報構造を備えた代表的例である順序木の符号化の性能を明らかにしている.(3)論文"Inductive Factorization on Words"は,文字列生成情報源からの正例の提示によって情報源を極限同定する学習法について研究を行っている.(4)著書[情報と符号化の数理]は,情報源圧縮の数理的構造を丁寧に解説し,最近の研究の先端的トピックスを大量に提示した教科書である. 2.不正利用者を特定しやすい電子透かし方式の研究では、情報理論的な視点から、誤り訂正符号の理論との関係、様々な攻撃方法について検証を行った。この3点を融合させる新しい透かしモデルの構築とすでに提案しているアルゴリズムを公開しかつ、誤り訂正符号を利用した電子透かしにおける新しい方式の概念を検討している。 3.実際の通信路ではランダム誤りバースト誤りが同時に発生する場合がある.このような誤りを復号誤りとよぶ.そこで,復号誤りからデータを保護するために,まずは復号誤りの数理的な取り扱いを可能とする理論的枠組を構築した.その結果,ある種の復号誤り制御符号を効率的に構成可能であることが明らかになり,さらにその性能評価を可能にした.今後は,復号誤り制御符号の具体的かつ効率的な構成法と復号法(代数的アルゴリズム)を明確にする方向に研究を進める予定.
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