研究概要 |
1.データ圧縮・保護のための情報変換においては,情報源を規定している分布を別の分布に置き換えるという符号化が必ず必要となってくる.また、そのように変換された分布がもとの分布に正確に戻すことのできる符号化であることが望ましい.論文"Reversible Distribution Converter with Finite Precision Arithmetic"は,このような符号化を有限の精度の算術演算だけを用いることで実現する技法を開発し,その性能を解析したものである.また,論文"An Input-Output Relation of the Trapdoor Channel"は記憶のある通信路として有名な「落し戸通信路」入出力関係に見られる特異な再帰関係を指摘したもので,記憶通信路を通して情報を信頼性高く伝送するための技法に示唆を与えている. 2.ランダム誤りとバース誤りが混在する複合誤りからデータを保護する目的として,昨年度までの研究成果より,複合誤りをデジタル通信路の数学的モデルの枠組の中で定義し,理論的に取り扱えることを明らかにした.さらに,複合誤りを訂正可能な符号のクラスとして繰り返し符号を提案し,その訂正能力の限界を理論的に解析,評価した.今年度は,複合誤り訂正符号のクラスである繰り返し符号に対する復号法を提案した.この繰り返し符号のクラスには,積符号,連接符号など理論と応用の両側面において重要な符号を含む.そして,提案した復号法は,繰り返し符号が有する理論的限界まで複合誤り訂正可能であることも明らかにした.また,本年度は最近注目されている軟入力軟出力復号に着目して,誤訂正の改善という視点から検討を行った
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