研究概要 |
多様な情報源から生成されるデータの効率のよい,しかも安全性が保証された蓄積技法,伝達技法は近年ますます重要性を増しているが,そのための情報変換の仕組みを研究することがこの研究課題の目的である。データ圧縮のための情報変換に関しては,語頭語尾符号の性質を探究し,興味あるいくつかの性質を明らかにした.データ圧縮やデータ蓄積のためには,順序木の効率的表現法が欠かせない.そこで,順序木の符号化の性能を解析し,最適な符号語長関数を厳密な形で与えた.さらに,トライと呼ばれるデータ構造を解析し,その分岐が不均等な確率で支配されているときの,トライの期待分岐数,期待深さの漸近的性能をメリン変換の特異解析を用いて厳密に導出した.このとき,関係する母関数の留数にはエントロピー関数が出現する.これは,一般調和級数における一般化振幅と振動数が,多項係数と確率積の関係にあるときに見られる.また,2分木のpre-order符号と数え上げ符号との組み合せから導出される新しい整数符号Catalan符号を提案し,従来の整数符号化の代表であるエライアス符号の性能をよく記述する対数スター関数と比較検討した.データが雑音で汚されたり,妨害者がデータの伝送に介在するなどの不確定な環境でも安全な通信を確保するための情報の変換技術に関しては,誤り訂正符号化とデータセキュリティーの立場からの研究が行われた.とくに,複合誤りからデータを保護するための理論的枠組を,信号の送信および受信空間に複合距離という関係を導入して,数理的な取り扱いを可能とし,複合誤り訂正符号のクラスとなる繰り返し符号に対する復号法を提案した.一方,データセキュリティーの研究は,電子透かしの不正な削除に耐生のある方式に焦点を絞り,誤り訂正符号の理論との関係、様々な攻撃方法について検証を行った.結託や繰り返しによる攻撃への強さと利用者の便宜性を兼ね備えた方式を実現した.
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