軟入力軟出力復号は、直列連接符号の内符号の復号や、ターボ復号の構成要素として重要な技術である。高度な情報通信技術の進展に伴い、軟出力復号を用いる誤り訂正方式も実用の段階になった。こうした時代の要求に応えるため、本研究では、実用に適した新しい軟入力軟出力復号法の構築とそれに適する符号構成を目指している。軟出力(信頼度情報)は各情報ビットの事後確率に他ならず、最大事後確率復号(Maximum A Posteriori復号:MAP復号)を行うことで得ることができる。MAP復号を具体的に行う方法にBahlらにより提案された符号のトレリスを用いて計算を行うBCJRアルゴリズムがある。このアルゴリズムは、復号過程で多くのデータを保存しなければならないため、実用上の制約が大きい。このため、このため確率計算を簡略にした軟出力復号の方法が多数提案されている。符号の構造を利用して、この軟出力の結果を用いるターボ復号に関しても、様々な学習理論、微分幾何、シンボルダイナミックスなど様々な立場から類似のあるいはより優れたアルゴリズムを得ようとする研究が進められつつある。 そうした中、本研究ではまたこれらの手法とは異なる新たなアプローチとしてすでに知られた符号理論の復号方の手法である可変閾値復号のアルゴリズムに着目し、計算量の増大しない新しいタイプのアルゴリズムを提案した。その検証のため、ターボ符号・積符号・低密度パリティ検査符号に対する、ターボ復号や、それを一般化した確率に基づく量をフィードバックする復号法を計算機上にシミュレータとして実現した。シミュレータでは、磁気記録などの記録を有する通信路を含めたターボ等価を含めた実験が行えるようになっている。そうした中で、幾つかの復号アルゴリズムに関するアイデアを実装し評価した結果、可変閾値を利用する手法が非常に有効であることが確認できた。これは、これまで提案されている改善手法の分類に属さないという点でも注目に値する。
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