次世代の通信方式として、符号分割多元接続通信方式(CDMA)が注目されている。しかし、この方式では、他局間干渉の存在により性能が大きく劣化し、初期同期捕捉時には重大な問題となる。本研究では、直交化フィルタを使用し、また、拡散系列との相関を有効利用、小回路規模で、同期捕捉時間を大幅に短縮する方法を、新たに提案し、その性能を明らかにした。また、従来法に比べて、何倍程度高速化が可能なのかを明確にした。 1.基本的な解析と本方式の改善検討。"同期点直接検出法"(従来法、前提案方式)とそれに"同期点候補推定法"を併用する方式(改良型提案方式)について検討し、約1/3の時間で同期捕捉が可能となった。 2.マルチパスフェージング伝送路での本方式の適用。受信入力を複素数として扱い、直交化フィルタのアルゴリズムも複素数アルゴリズムとすることで捕捉可能、また、マルチパスの位相位置も同時に検出可能であることを確認した。 3.直交化フィルタの収束のためのステップサイズの検討、多停留検出法導入による更なる高速化。 これらにより大幅な改善が可能となった。例えば、拡散符号長127、Eb/N0=24.0[dB]、多元接続数24、SIR=6[dB]で、同期点候補推定法と同期点直接検出法の併用法では平均同期捕捉時間が1.32×10^6T[sec]であったのに対して、ステップサイズを適切に設定した方式では7.97×10^4T[sec]、多停留検出法を導入した方式では5.97×10^4T[sec]となり、約1/20となった。これは、伝送速度を64[kbps]を仮定すると、1[sec](=6.4×10^4T[sec])以内で同期捕捉が可能となり、実用的レベルの同期捕捉時間にすることができた。
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