| 研究概要 |
次世代移動体通信方式として期待されているDS/CDMAにおいてフェージング軽減や干渉波除去が大きな課題としてあげられている.一方,移動体通信と同じ電波環境を有する高度道路交通システムにおいても同様の干渉やフェージングの問題が発生すると思われる.そこで,本年度は,高分解能スペクトル解析法の一つであるESPRITを用いた到来波の信号パラメータ(到来方向,電力など)推定および推定結果に基づくアレーアンテナのビーム形成法について検討を行い,高機能スマートアンテナの要素技術という位置づけで研究を進めた.具体的な成果を以下に示す.
1.ESPRITを用いて2次元到来角情報(方位角・天頂角)を推定する場合,2次元配列である平面アレーが必要となることから,正四角形アレーを用いた検討が主として行われている.一方,平面アレーには,正三角形アレーや正六角形アレーなどもあり,その特性からビーム走査アンテナとしてよく利用される.そこで,本研究では,従来のESPRITを拡張して,各種平面アレーに対して効率良くESPRITを適用する手法を考案し,計算機シミュレーションを通じて,その特性を明らかにした.更に,ESPRITの特性改善を目的として,幾つかの手法を提案し,推定結果に基づく効率的なビーム形成法についても示した.
2.ESPRITは本質的に到来波の到来方向等をリアルタイムに推定できる構造を持っていないのでリアルタイム処理には向かない.そこで,再帰的に計算可能なQR分解に基づく高速再帰型ESPRITを2次元推定に拡張し,更に計算効率向上を目的にUnitary ESPRITを導入した高速再帰型2D Unitary ESPRITを提案した.そして,2次元推定の一つである相関性の多重波に対する到来方位角・天頂角の推定の計算機シミュレーションを試みた結果,提案法の特性が明らかとなり,移動通信における実用的な有効性が示された.
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