研究概要 |
本年度は,非線形力学系に存在する対称性を鑑みて,平衡点の数と分岐の数え上げて分類することを考え,対応する群の表現を整理し,幾つかの数学的な解析結果を得た.手順をまとめると,以下となる.まず,対称性を群で表示し,その固定化部分空間と群軌道を求める.これから共役類に分けられた部分群の束を作り,そのハッセ図を描き,各節点に部分群とその固定化部分空間を併記することにより平衡点の対称性を鑑みた数え上げが行なえる.具体的な力学系についてこの手法を適用し,平衡点を数え上げ,その位相的性質を分類した.引続き,周期解の数え上げについても検討する予定である. その他,非常に基本的な振動子であるBVP発振器について,結合系における対称性を調べ直した.故意に発振リズムの異なる振動子を設定し,それらを互いに弱く結合させるだけで,これまでにないタイプのカオスを発生させることができた.パラメータ平面の大域に渡って,周期解の分岐構造を調べ,分岐図で特定されたパラメータ値における数値シミュレーションは,対応する実電気回路においても完全に再現された.今後,他の結合方式についても調べる一方,定性的な分岐発生のメカニズムの説明を試みる. 一方,BVP発振器をα関数を用いてシナプス結合させる系について検討した.発生する周期解については,ポアンカレ写像が可微分なまま構成できるだめ,周期解の分岐とカオスについては全て数値的に調べることができた.また,対称性を有限群の表現を用いて分類し,平衡点の数え上げ,位相的性質の完全な分類が行なえた. また,スイッチなどの不連続要素を含む力学系の解析と回路実験も進んでいる.本年度は非常に簡単な一次元リターンマップにしたがうスイッチの入った電気回路を解析した.ポアンカレ写像がスイッチの切り替え点でうまく定義できるため,解の振る舞いを数値的に完全に把握することができた.
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