空間変化型結像システムで劣化させられた画像から元の画像を復元し、より鮮明な画像を出力するディジタル画像復元フィルタを構成したものである。レンズを含む現実の結像系はそのほとんどが厳密には空間変化系であり、本提案手法は実際のカメラ用単焦点レンズ、ズームレンズによるぼけた背景の復元等に極めて効果的である。本研究では代表的な単焦点レンズ、ズームレンズの点拡がり関数(PSF)を詳細に実験検査し、この結果をもとに各画素位置でPSFの形状を推定する方法を採用している。PSFは画像中心から同心円状に変化し、中心付近は円形、周辺付近は楕円形状となっている。中心からの距離が離れる程真円から形状が歪んでいく。すなわち中心画素からの距離と角度でその位置でのおおよそのPSF形状が推察できる。本研究ではこれらの推察をPSFの初期値として効率的に最適PSF推定を行っている。PSF推定の評価関数は各画素位置を中心とする近傍領域でのphase-only synthesis(POS)の細線化に依るものとしている。この手法により各画素位置でのPSFが最適に推定され、最小平均2乗誤差フィルタ(画像復元フィルタ)が構成される。フィルタリングも各画素位置で異なる適応的なものとなる。この復元フィルタにより実際のレンズで取り込まれた画像をスキャナーで読み込んだり、ディジタルカメラで取り込まれた実際の劣化画像(場合によっては背景のぼけた部分)からの復元が可能になった。また復元結果の更なる画質改善のため新しいシャープニングの方法を開発している。ここでは摂動サブブロックposを利用し、シャープでノイズの少ない処理画像を得る手法を構成している。摂動POSはシャープな画像の輪郭線抽出には極めて強力なツールとなり、従来法であるラプラシアンと組み合わせて使用すると自由にシャープニングレベルをコントロールできるフィルタが構成できる。このようにノイズを抑圧しながら画像の輪郭をシャープにするフィルタは画像復元フィルタと組み合わせて使用すると効果的である。
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