近年、インターネットを初めとする情報化社会の発展に伴い、伝送あるいは蓄積のための情報量圧縮が重要な課題になっている。画像圧縮は、適度な画像の質を保ちつつ情報量を大幅に削滅する非可逆符号化と、画像情報を失うことなく圧縮する可逆符号化に分類される。次世代の符号化では、一つのシステムでこれらの2つの要求を満たす技術が要求されている。 本研究では2つの全域通過回路の並列接続により、2チャンネルフィルタバンクを構成し、これをツリー状に接続することにより、ウエーブレット変換を実現し、互換性を満たす符号化技術を開発した。全域通過回路は再帰形のフィルタであるが、それゆえに周波数分割と予測を同時に実現できるという特徴を有している。非可逆符号化では、高々2次の全域通過関数を用いて符号化利得を最適化し、従来法より優れた符号化性能を持つシステムを設計した。一方可逆符号化の場合には、全域通過回路の並列構造を、リフティングを用いて実現し、構造的に整数変換を保ち、より高い圧縮性能を追求している。これらの構造は基本的に同一であり、数個の係数を変化させるだけで、互換性を保ちつつ、より高性能な圧縮が可能になった。 次年度の課題は、これをさらにチューニングし、より高性能な圧縮システムを目指し、更に2分割フィルタバンクを一般性のあるM分割に拡張する事である。さらにカラー画像のための可逆、非可逆符号化システムを実現したい。
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