研究概要 |
区間解析は非線形方程式のすべての解を求める代表的な数値解法として知られているが,計算効率が非常に悪く,実用化に際しては大きな課題を残していた。本研究では,区間解析における基本的な方法論として,非線形方程式を線形等式と線形不等式で置き換え(幾何学的には関数曲線を多角形で囲み),非線形方程式を一旦線形計画問題に定式化してから,それに線形計画法を適用するという新しいアイデアに基づいた研究を行った。この方法により,それまで不可能だった計算が可能になることが次々と明らかになっている。 まず,上記のアイデアを区分的線形回路の全解探索問題に応用した。その結果,それまで領域内に"解曲面が存在するか否か"を判定していた符号テストを,"解曲面同士が交わるかどうか"を判定するテストに改良することが可能となった。これにより,従来法とは比較にならないほど効率のよい実用的な全解探索アルゴリズムが確立され,この分野では前人未踏の領域数10^<200>の全解探索にも成功した。 次に,設計現場からの大きな需要にも係わらず実用的アルゴリズムの存在しなかった「非線形回路のすべての特性曲線を求めるアルゴリズムの開発」に対し,上記のアイデアを拡張することにより,すべての特性曲線を求める効率的な方法を開発した。 また,昨年度までに開発した球面法のアルゴリズムをベースに,非線形回路の安定解に収束するホモトピー法のアルゴリズムを完成させ,同時にその大域的収束性を証明した。 さらに,高分子化学の研究者との共同研究により,上記のアルゴリズムを用いた高分子溶液の多相平衡の研究に取り組み,実験では測定が困難な様々な興味深いメカニズム(高圧力下での共存曲線の対称性の変化など)を解明することに成功した。
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