誘電体導波路を伝搬する電磁界の解析に有効なフルベクトル手法を開発し、光導波路問題のみならずマイクロ波帯の放射問題を議論した。 光導波路問題に関しては、差分精度の向上に注意を払い、従来の2次精度手法に比べて、計算時間をほとんど増加させずに、4次精度を確保するダグラス法を開発した。等間隔メッシュに加えて、不等間隔メッシュにおいてさえも、4次精度を維持する方法を見出した。リブ導波路の解析では、固有モードを評価し、方向性結合器の結合長が従来に比べて精度よく評価できることを明示した。さらに、屈折率境界を任意の位置に選べる手法を考案し、量子化誤差の影響を取り除いて、テーパ導波路を解析できることを明らかにした。 放射問題の検討に先立ち、計算効率の向上に不可欠な、計算領域端での吸収境界条件の性能を検討した。その結果、完全吸収層(PML)は最も精度が高いが、20程度の層数が必要であり、メモリの点では必ずしも有利でないことを明らかにした。共在補対演算子法では、4程度の層数で、PMLの16層に匹敵する性能を有することを明らかにした。他方、Higdon型の吸収境界条件は、吸収性能は劣るものの、余分に必要なメモリがなく、最も高速に計算できることを実証した。 共在補対演算子法を境界条件に使用し、誘電体棒を放射器として使用した際の特性を解き明かした。FDTD法との併用により、誘電体棒近傍の電磁界を、表面波と放射波とに分離することに成功した。これにより、誘電体棒の長さが放射利得に及ぼす効果を定量的に評価するのみならず定性的にも解釈した。すなわち、励振部で生じる放射モード波は棒を伝搬する固有モード波と干渉を生じており、合成界が棒先端を含む面で等位相、等振幅を満たすように広がっているときに、最大利得の得られることを明らかにした。さらに放射界に関してはマイクロ波で実験を行い、理論値と実験値がよく一致することを確認した。
|