電気通信分野に於いて、1つの通信路を通じて、複数の並列信号を同時に送受信を可能にする多重化通信システムが重要である.この研究課題は、線形ひずみのある通信路に於いても並列信号間の干渉がない多重化システムを提供することを目的としている.平成11年度の研究実績の概要を以下に述べる. (1)在来の通信システムとの整合性の確立 提案する多重化装置の出力はディジタル信号なので一般にそのままでは送信できない.そこで、低域通過フィルタによってまず多重化されたディジタル信号をベースバンドのアナログ信号に変換し、それを従来の変調器で搬送波帯域のアナログ信号にして送信する.受信側では、受信した搬送波帯域の信号を復調し、それをある時間間隔でサンプリングしてディジタル信号に戻す.このような通信システムを想定し、与えられた搬送波周波数帯域と送信側の低域通過フィルタの帯域特性および受信側でのサンプリング間隔等の関連を検討した.また、変調方式としてQAM(quadrature amplitude modulation)などの従来の変調方式を用るものとして、搬送波帯域通信への利用形態を確立した. (2)線形ひずみのある伝送路に対する並列仮想通信路のモデル化 多くの場合、伝送路は線形フィルタと加算的雑音でモデル化される.このような線形ひずみのある伝送路を想定したとき、提案する多重化方式は、伝送路を互いに干渉のないサブチャンネル伝送路に並列分割できることを理論的に確認した.すなわち、各サブチャンネルのユーザは独立した仮想伝送路を通じて通信を行うことが出来る.さらに、与えられた伝送路の特性から仮装伝送路の特性を求める関係式も明らかにした.
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