研究概要 |
リング形スイッチトキャパシタ(SC)電源は加えるクロックのパターンを変化することによって,回路構成を変えることなく,昇降圧比を自由に変化できる.これまで,数個のキャパシタを用いた場合の特性は理論と実験によって確認されており,良好な特性が得られている.本研究では,集積化することを前提にキャパシタ数を数十個から数百個に増やした場合の特性を明らかにする.即ち,キャパシタの総容量とスイッチの総オン抵抗(すべてのスイッチを並列接続したときのオン抵抗)を限定して,キャパシタ数を増加した場合の特性限界を理論と実験によって明らかにする. 直並列切換え形SC変成器のように,電荷転送用キャパシタの数nが増えても,各キャパシタ電圧の変化が同一と見なせれば,状態ベクトルの要素数は増えないようにできるので,キャパシタ数が一般的にn個の場合でも解析することができる.しかし,リング形SC変成器のように,各キャパシタ電圧の変化が異なる場合は,キャパシタ数nが増えるとその分状態ベクトルの要素数が増える.従って,n=2や3のように具体的にキャパシタ数が与えられた場合は従来の方法でも解析的に求められるが,一般的な場合を解析することは不可能である. 本研究により,電荷転送用キャパシタの数が一般的にn個の場合におけるリング形SC変成器の出力抵抗を簡単に求められる新しい方法を確立できた.提案方法を用いて解析的に出力抵抗を求めた結果は,状態平均化法を用いた従来の場合と完全に一致した.またnが増えた場合,リング形SC変成器は昇降圧比を任意に可変できるが,昇降圧比のほぼ2乗に比例して出力抵抗が増加することがわかった.今後,キャパシタ数を増加した場合の理論的な特性を実験によって検証していく予定である.
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