知識が不完全でもその不完全性に応じた概略的な解答を提示するシステムの実現をめざし、知識の欠落を許容する推論メカニズムおよびその推論に用いる言葉(単語)の意味の類似性判別を行う大規模概念ベースについて研究した。以下に研究成果を示す。 1.概念ベースに関する研究 総単語数26万語の大規模概念ベースを構築した。本概念ベースは、約6千字の漢字概念ベースを含み、新語や造語への対処を可能としている。構築にあたっては、類似性判別能力の向上のため、シソーラス情報を利用した新たな概念属性取得法を考案し、従来手法との併合を図った。また、本概念ベースを利用した類似度計算法および類似性判別能力評価法について検討した(人工知能学会研究会で発表)。さらに、パソコン等での利用を想定した5万語(常用語を選定)規模のコンパクト版概念ベースを構築した。 2.知識の欠落に対処できる推論技術の研究 これまで検討を進めてきた概略推論法(不足知識を類似の知識で代替させ概略的な解を得る)の改良を図った。具体的には、従来は類似知識の検出を静的に行っていたが、今年度はこれを推論過程の状況を考慮して動的に行う手法を提案し、その定式化、アルゴリズム化を図った(国際会議KES、人工知能学会全国大会で発表)。 また、本推論法の応用として自由対話システムの開発を進めた。本システムの狙いは自然な対話の実現であり、簡単な質問応答機能とユーザ感情の抽出機能を実現した(情報処理学会全国大会、人工知能学会研究会で発表)。ユーザの質問に対し、それまでの会話で得られた知識と問題解決知識(予め作成)をもとに上記の手法で推論し、回答させている。
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