知識が不完全でもその不完全性に応じた概略的な解答を提示するシステムの実現をめざし、知識の欠落を許容する推論メカニズムおよびその推論に用いる言葉(単語)の意味の類似性判別を行う大規模概念ベースについて研究した。以下に研究成果を示す。 1.知識の欠落に対処できる推論技術の研究 これまで提案してきた概略推論法(電子情報通信学会論文誌掲載)における知識表現法について主に研究した。具体的には、自然言語文の述語知識への自動変換を考慮した格文法をベースとする表現法について研究し、素式の解釈が一意に定まり、かつ比較的広範囲の知識が表現可能な手法を提案した。さらに、これに対し、EDR電子化辞書の情報を利用し、素式の引数部に自動的にラベル付けする方法を開発した(情報処理学会全国大会で発表)。 また、本推論法の一応用である自由対話システムの開発を進めた。従来の対話システムでは、話題がそれに内蔵される知識や情報に関するものに限定されるが、ここではあらゆる話題に対応するため、インターネット情報を利用した応答生成方式について研究した。具体的には、ネット上に流れるニュース文書からユーザの入力文にマッチする文書を抽出し、その文書を基に応答文を生成する方式を考案し、その基本動作を確認した(情報処理学会全国大会で発表)。 2.概念ベースに関する研究 これまで開発してきた大規模概念ベースの評価を中心に行った。具体的には、新聞記事の共起情報をもとに同様な構造の概念ベースを構築し、その類似性判別能力との比較評価を行い、辞書の定義文をもとにする方式の優位性を確認した(人工知能学会研究会で発表)。また、国語辞典からの同義語、類語辞書の自動構築を進めた。
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