知識が不完全でもその不完全性に応じた概略的な解答を提示するシステムの実現をめざし、知識の欠落を許容する推論法およびその推論に用いる言葉(単語)の意味の類似性判別を行う大規模概念ベースについて研究した。 前者については、不足知識を類似の知識で代替させ概略的な解を得る推論方式を考案し、その体系化を図り、実験システムにより基本動作を確認した。本推論法は、知識を全て単語及びその結合体で表現し、知識間の類似性を概念ベースを用いて判定し、述語論理における導出原理に基づいて動作する。特徴的かつ独創的な点は、問題知識の一部が不足している場合、問題知識に類似する知識を欠落した知識とみなし推論を進め、かつその類似性判定を推論の状況を考慮して動的に行うことにある。また、実用面での評価のため自由対話システムを構築し、その質問応答部に適用し有効性を確認した。ただし、推論速度、解の妥当性等々の点で問題点は残されており、今後もさらに継続して研究する必要がある。 後者については、総単語数26万語の大規模概念ベースを構築した。本概念ベースは、国語辞書等における語義文の情報をもとに機械的に作成したもので、各概念(単語)は関連する概念とその関連の度合いにより表現される。約6千字の漢字概念ベースを含み、既存語だけでなく新語や造語についても類似性判別を可能にしている。さらに、新聞記事の共起情報をもとに同様な構造の概念ベースを作成し、その類似性判別能力との比較評価を行い、本概念ベースにおける辞書の語義文をもとにする方式の優位性を確認した。
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