近年、医療の分野で、新たな医療技術としてドラッグデリバリーシステムが大きな注目を集めている。ドラッグデリバリーシステムでは生体内に薬液を含む微小なカプセルを血管を介して注入し、患部で薬剤を放出させる治療法である。マイクロカプセルに可制御な力を外部から加える方法として、現在、光、電磁力、超音波などを用いるものがあげられる。なかでも超音波は、生体に対して無害であり、光の利用が困難な不透明な物質中のマイクロカプセルについても適用できるため、特に生体組織への応用に有効であると考えられる。このように、超音波は生体内のマイクロカプセルの操作に有効であるといえるが超音波による微小気泡の操作技術は、未だ確立されていないのが現状である。たとえば、流体内における超音波場中の微小気泡には、超音波による放射圧、Bjerkness force、浮力、重力等が働き、非常に複雑な運動をする。このため、血流中のマイクロカプセルを制御するドラックデリバリー応用を考える際には、まず超音波場中の微小気泡の運動を調べる必要である。そこで、本年度では、微小気泡の超音波に対する特性を調べるために、実験系を構成し、超音波の照射法として超音波定在波を用いる方法、位相シフト進行超音波による超音波場を用いる方法、凹面超音波振動子を用いた方法などを検討し微小気泡のトラッピング効率を実験的に比較し検討を加えた。これらの実験は粒径20μmの含気マイクロバブルであるエクスパンセルを用いて行った。また実験に臨床に超音波造影剤として用いられているレボビストを用いて流体中の平均粒径2μm以下の微小気泡のトラッピングの実験も行った。この実験の過程で平均粒径2μm以下の微小気泡を世界で始めてトラッピングすることに成功した。
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