医用超音波の分野において直径数μm程度の微小気泡が注目を集めている。毛細血管をも通り抜けることができるこのような微小気泡は、超音波をよく散乱するので近年超音波造影法でのコントラスト剤として使われていることは言うまでもないが、この他にも超音波で破壊され易いので血管を通して薬剤を直接患部に搬送する将来のドラッグ・デリバリ・システムでの薬液キャリアーとしての応用も期待されている。これらの応用が考えらるのも微小気泡が超音波照射下で興味深い現象を示すためであるが、たとえば超音波下での小気泡へ分裂、気泡膜を通しての内部ガスの拡散、二次的な超音波による気泡間の引力や斥力の発生、また気泡の存在によりキャビテーションの閾値が下がる音響化学的作用など多くの現象が知られている。これら複雑な現象を理解しこれらを将来の具体的な計測応用に結び付けようとする研究が本研究の目的であるが、本研究の成果を列記すると、1)超音波と気泡との相互作用について流体的取り扱いにもとづくシミュレーション手法を新たに開発し、相互作用について多くの知見をえた。2)音響放射圧のうちPrimary forceとSecondary force(Bjerknes force)の2種類を積極的に極微小粒子(極微小気泡)のトラッピングに利用する手法を開発し特にドラッグ・デリバリ・システムへの応用を提案した。3)超音波の音響放射圧を用いる各種マニピュレーションについて提案し実験的にその有効性を明らかにしたことなどである。特に、気泡の成長を超音波で制御する微小気泡のトラッピングでは、製薬会社や臨床医の協力を得て実際の血液を用いたIn vitroでの実験を行いその医学応用の可能性を示すことができ関連国際会議で招待講演を行うなど評価を得ることができた。
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