研究概要 |
この研究の目標は,偏波レーダを用いることによって,建物倒壊など災害状況を監視する新構想のサーベイランスシステムを提案し,その有効性を実証することにある。最終目的は偏波による散乱行列を取得し,その散乱行列から建物の倒壊状況を推定することである。そのために,観測方法としては人工衛星や航空機搭載レーダによる観測と同じ条件になるよう,今まで研究室で開発してきたFM-CWレーダを用いてデータ取得ができるように装置を作成した。本年度は,電波暗室内でレーダ実験を行うための装置作りを主題として以下の項目について検討を進めてきた。 ◆アンテナ支持装置:電波暗室内に水平方向に1mm精度で,アンテナを2m走査できるX-Yポジショナーを設定し,コンピュータで制御できるようにソフトウエアを作成した。そして,水平・垂直偏波の送受信用アンテナ4つを固定する支持枠を作成した。また,FM-CWレーダのポジショナー取り付けと動作確認。 ◆ターゲット:都市域の建物モデルを作成すべく,コンクリートブロックや木箱を使い,レーダヘの反射信号レベルを測定した。しかし,反射信号レベルは非常に小さく,レーダの最小受信可能レベルに近い状態であったため,アルミホイールなどの金属をモデルに張り付け,人為的に反射を大きくした。 ◆レーダの偏波校正:このレーダでは,散乱行列を取得するが,その偏波精度は最も重要な要素である。予め偏波散乱特性の知られているターゲットでレーダの偏波校正を行い,20dB程度の偏波純度を保つことができた。この校正用タ一ゲットは45度に傾けた平行平板導波管で,散乱の研究を通して生み出されたものである。 これらの実験装置作成と偏波校正が本年度の大きなテーマであるが,ほぼ予定通りに達成できた。次に,航空機を模擬して,FM-CWレーダを走査させ,生データを取得した後に,合成開口処理を施し,ターゲットのイメージングを行っているところである。
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