本年度は、研究の初年度にあたり「変換聴覚フィードバック」実験の遂行を可能とするための基本実験系の構築と、実験制御およびデータ解析のための基本プログラムの構築を主体に研究を進めた。実験系の構成にあたっては、まず、最小限の構成として、従来行ってきた実験の追試を可能とするため、実時間信号処理のためのハーモナイザを購入した。また、このハーモナイザを制御するためのパーソナルコンピュータと、制御に用いるMIDI信号を送出するためのプログラムを購入し、基本的な部分を整備した。 また、こうして構築した実験系で収録された音声信号を分析するためのツールとして、基本周波数ならびに基本周期の抽出プログラムを作成した。これらは、研究代表者が別プロジェクトで開発中のSTRAIGHTと呼ばれる高品質音声分析変換合成システムの構成部品の技術を転移したものである。今回、本課題の遂行のための検討の過程で、従来の分析方法を凌ぐ性能を有する大変興味深い方法の発見に結びついたため、研究会ならびに学会の大会において発表することとした。次年度に、成果の一つとして学術雑誌への投稿を行う予定である。また、これらと並行して、音声の基本周波数の揺らぎのスペクトルに対応した試験用摂動信号の構成方法やspline補間を利用した測定信号の周期の影響の除去方法等をについての検討を進めた。
|