本研究は、光ファイバセンサを用いて生体中の酵素をin vivoで検出する新技術を開発し、これを発癌機構の解明へ応用することを目的に、北海道工業大学と北大獣医学研との共同研究として主に次のような2つのプロジェクトとして進められた。 (1)ファイバセンサシステムの開発と装置の試作であり、主に、北海道工業大学において行った。 (2)試作されたシステムを用い、このシステムの発癌機構解明への適用について、北大獣医学研において行なった。 その結果、(1)の成果として、これまでにない新しい酵素検出システム(Ver.1)を構築することに成功した。本装置を用いて、発癌物質であるbnzopyrenなどを投与したラットの肝臓におけるCYP1A1の発現を観察したところ、日を追って、酵素活性が高まっていく状況、発癌物質の濃度による差異などを高感度に検出することに成功した。また、controlにおいても微量な酵素による反応も捉えることができた。本装置では、反応の進捗を実時間で追跡することが可能であり、酵素反応機構を克明に解析できるようになった。 また、(2)の成果として、発癌を引き起こすと考えられている要因として紫外線暴露をラットの耳表皮に与えたときのCYP1A1の発現状況とその知見に基づく、発癌の確率、治癒率などを定量的に計測評価できる見通しを得た。 さらに、(1)で開発されたシステムに改良を加え、さらにパフォーマンス100程度改善したシステムの開発に成功した。これらの成果は、酵素の動態に関する知見が癌の発症前に発癌の診断に使えるという可能性を示したものであり、本システムは癌診断装置という方向で応用できることを意味するものである。
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