研究概要 |
本年度は,前年度の結果を踏まえ,引き続き運動・作業技能の形成を身体運動の出力機構である筋骨格系の力学パラメータ,ならびに関節出力トルクパターンの時間変化と関連し,作業や環境に応じて形成されるこれらのパターンを作業スキルと捉え,その形成と汎化能力,およびそのメカニカルシステムへの応用において,以下の項目について研究を行ない,有益な知見および一定の成果を得られた. ・項目1:動的マニピュレーションタスクの例としてとりあげてきたロボティックバッティングシステムにおいて,マニピュレータの関節駆動トルクパターンを作業スキルと捉え,目標打撃軌道を陽に与えずに繰り返し動作により目標打球速度を実現する学習アーキテクチャーについて検討をし,提案システムの有効性,および動的環境における学習システムの汎化能力について確認を行なった. ・項目2:人間の手のように複数の指で物体を把持して操り,持ち変えるために指を物体表面に沿って滑らせて新たな所定把持位置に移動させるためのメカニズムをロボット機構の運動学・力学のアプローチから定式化し,多指ロボットハンドを用いて人間のような器用な作業を行うための一実現法を示唆することができた. ・項目3:マスタ・スレーブマニピュレータシステムによる遠隔微細操作時において,人間の作業適応能力を定量的な表現を用いて,マスタ,スレーブマニピュレータ間の位置・力伝達則を変えたときの人間オペレータ特性を実験的解析し,いくつかの場合についてそれを明らかにした. ・項目4:引き続きサイパネティク義手・義足の実用化時における適切な信号処理・制御法を検討した.義手においては,従来の動作パターン識別よりも柔軟で連続動作の実現が可能なトルク制御義手の学習・制御法について識別率の向上,多自由度で安定な制御の実現を目指して検討を行なった.また,義足では,大腿義足の力学モデルをベースに受動要素なる各関節に配置される粘弾性機構パラメータ調整の一方法を提案した. ・項目5:群ロボットにおける動的機能分散を一種の作業スキルと捉え,それを実現するためのアーキテクチャについて検討を行なった.特に,二足歩行ロボット集団の協調荷物運搬問題において,ロボットと環境の関係同定,およびそれに基づく関係制御として構成される動的機能分散アルゴリズムを提案し,その有効性を確認した.
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