研究概要 |
本研究では,人間の筋運動系のインピーダンス特性を実験的に解析しそのモデル化を行うとともに,人間のインピーダンス特性を取り込んだ新しい電動義手制御法を開発することを目的としている.そのため本年度は,[1]2自由度インピーダンス計測装置の開発,[2]脊髄反射系の感度調節による可変インピーダンス制御機構の解析を行った.主要な結果は以下の通りである. 1.2自由度インピーダンス計測装置の開発: 人間の手先インピーダンスを実験的に測定するためには,作業中の人間の手先に外部から強制的な変位を与え,それに対応して発生する力を正確に測定せねばならない.そこで,本研究では1自由度ダイレクトドライブ型リニアモータ(TSLM135-600A,ドライバTDL1-4500S)とメガスラストモータ(YB2-1-60-001,ドライバEML-A30c15)を直交配置し,強制変位を平面内の任意の方向に印加可能な装置を開発した.そして,(1)インピーダンス推定法の考案,(2)インピーダンス推定用モータ制御プログラムの開発,(3)推定精度の確認を行い,開発した装置の有効性を検証した. 2.脊髄反射系のインピーダンス解析: 脊髄神経機構が人間の随意運動の制御に重要な役割を果たしていることは従来からよく指摘されているが,脊髄神経機構の興奮性が人間の関節まわりのインピーダンス特性にどのような影響を与えるかについてはまだ解明されていない.そこで本研究では,特に手首関節に注目し,(1)筋活動状態と脊髄神経機構の興奮性との関係,(2)脊髄神経機構の興奮性と手首粘弾性との関係を調べた.実験結果の詳細については現在解析中であるが,筋活動状態に依存して手首の粘弾性が変化するという結果を得ており,次年度は関節インピーダンスを非線形重回帰モデルを用いて近似する方法を新たに考案するとともに,電動義手制御へ応用する予定である.
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