研究概要 |
本研究では,人間の筋運動系のインピーダンス特性を実験的に解析しそのモデル化を行うとともに,人間のインピーダンス特性を取り込んだ新しい電動義手制御法を開発することを目的としている.そのため今年度は,前年度にモデル化した人間のインピーダンス特性を動力義手の制御問題に応用した.主要な結果は以下の通りである. 1.動力義手制御系のインピーダンス解析: 超音波モータを用いた3自由度前腕動力義手を用いてインピーダンス制御系を構成し,制御用コンピュータを用いて各関節のインピーダンス制御系を構築した.被験者は自らの筋電位を調節することにより,このインピーダンスの目標値を変更することができる.実験の結果,(1)超音波モータによるインピーダンス制御がある程度,実現可能であること,(2)導電性ゴムを利用したカセンサによりコンプライアントな動作が実現できること,(3)切断者の操作トルクと関節インピーダンスをリアルタイムで推定することにより,切断した部位の運動をある程度,再現できることなどを明らかにした. 2.人間-義手制御系の構築と操作性評価: 1で開発したインピーダンス制御系に動作識別機能を組み込むことにより,義手制御系を構築した.動作識別機能は,操作者の筋電位から意図した動作を推定するものでニューラルネットによる学習機能を用いて実現した.これにより操作者は望みの動作を望みのインピーダンスで行うことが可能となる.切断者(年齢42才,右肘関節から約5cmの前腕部を切断)による操作性評価実験を行った結果,十分な操作性を実現することができた. 今後は,実験により得られた知見を整理するとともに,作業中の人間のインピーダンス制御特性を解析し,動力義手やリハビリ装置に応用できればと考えている.
|