本年度の研究成果は以下の通りである。 1.システムの入出力データに関する有限データ相関関数に対して、ウェーブレット変換(クロススペクトル)を施すことにより、無駄時間を推定する手法の開発を行い、また 2.入力の自己相関関数および入出力の相互相関関数のウェーブレット変換(パワー・クロススペクトル)から周波数応答を求め、そのゲイン特性から最小2乗フィッティングにより伝達関数を推定する手法の開発を行った。 一方、非定常とみなせるボイラ圧力系に、定常系に対する有名な手法であるヴェルヒ法(Welch法)によるスペクトル推定法を適用することは不可能であることを確認した。2.の方法はいわゆるブラックマン・テューキー法(Blackman-Tukey法)に属するものであり、対象とするシステムの非定常性により、どの程度の時間区間についてスペクトルの変動情報を取り込んでいくかが重要となってくる。今年度はそれをシミュレーションデータとボイラ圧力系の実データの両面から検討した。 今後はヴェルヒ法を、提案するウェーブレット変換を用いたスペクトル推定の方法に拡張し、スペクトルの変動情報の時間毎の処理について研究する。またボイラー系については、多入出力フィードバック系としての扱い、非線形特性への対応も課題である。
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