研究概要 |
近年,コンクリート構造物が使用される環境はますます厳しさを増しており,また,その要求される性能も多様化してきている。そのような社会的背景のもと,高流動,高強度,高耐久を主目的とした高性能コンクリートの開発研究が鋭意進められている。そして,コンクリートの高性能化を達成するためには鉱物質微粉末の適切な利用を図ることが重要なキーファクターであると考えられている。本研究課題は,鉱物質微粉末の保水性能に視点をあて,それとコンクリート品質の高性能化,特に耐久性の改善との関連に主眼をおいて検討しようとするものである。本年度は,(1)微粉末の粒子特性の評価,(2)微粉末の保水性能の評価,(3)微粉末の保水性能とブリーディング改善および遷移帯の改善効果の評価,について実施した。得られた結果の概要を以下に述べる。 1.鉱物質微粉末のBET比表面積,粒度分布,形状係数,充填時の空隙率を測定し粒子特性の評価を行った。 2.微粉末の保水性能を示す指標値として,従来から用いられてきた微粉末ペーストのフロー試験より得られる拘束水比に加え,微粉末ペーストのブリーディング試験および遠心分離試験により得られる限界の水粉体容積比についても新たに拘束水比と定義した。そして,それぞれの試験から得られる拘束水比3者の関係や,鉱物質微粉末のBET比表面積,粒度分布,形状係数,充填時の空隙率などの物理特性との関連を明らかにした。 3.石灰石微粉末や高炉スラグ微粉末など9種類の鉱物質微粉末をコンクリートの細骨材の絶対容積に置換し,ブリーディングの抑制効果について検討した。鉱物質微粉末の適切な利用は,コンクリートのブリーディングを抑制する手段として極めて有効であること,また,微粉末ペーストの試験から得られる拘束水比を用いて,その混入によるコンクリートのブリーディング抑制効果を評価することが可能であることを明らかにした。 4.コンクリートのブリーディング現象は,粗骨材界面における脆弱層(遷移帯)の形成と密接に関わり,ブリーディングが増加すると,粗骨材界面における脆弱層領域の大きさも増大する傾向にある。そして,ブリーディングを減少させ,脆弱層の形成を抑制するための一方策として鉱物質微粉末の使用は効果的である。
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