研究概要 |
アスファルトは非常に感温性が高い粘弾性的性質を持つ物質であり,これを用いたアスファルト舗装は,気象作用,とりわけ,日射や大気温度に支配される舗装体内温度の分布状態によってその力学挙動は大きく異なる.本研究は,気象データのみからアスファルト舗装内部温度の分布を理論的に推定し,それが,わだちぼれ深さの変動にどのように影響を及ぼすかを定量的にとらえることを目的としている. まず,舗装体が舗装外部から受けるエネルギを分類してみると,(1)正味短波放射エネルギ,(2)正味長波放射エネルギ,(3)非放射エネルギの3つがある.一般には,正味短波放射エネルギと正味長波放射エネルギを合わせて放射収支エネルギといい,これに非放射エネルギを加えて熱収支エネルギという.これら外部からのエネルギの定量化が重要である一方,これらのエネルギが舗装体内部にどのように吸収または放射され,内部をどのように伝導するかという問題も内部温度に大きな影響を及ぼす. 本研究では,上記のような因子を既往の研究成果と実験結果からできるだけ正確に定量化することを目指している. 本年度,明らかになったことは,新たに購入した数年分のAMeDAS(Automated Meteorological Data Acquisition System)気象データと,既往の研究の整理から,舗装表面に到達する熱収支エネルギをほぼ理論的に評価する手法を開発し,筑波の気象研究所で測定された実測値との比較を行って,その妥当性を確認した.また,路面に到達したエネルギがどの程度舗装に吸収されるかを表すアルベドの値を一部の材料で測定するとともに,文献で各種材料,色について整理をした.さらに,大気とアスファルト舗装表面の熱伝達率を一部の材料で実測した.このほかに,これらを組み合わせて舗装体内温度を測定する理論の骨組みを組み立てた.
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