過去2年間の研究において、「人命確保」「耐荷力維持」「早期復旧」の限界状態を比較列挙することと並行して、限界状態発生時の被災状況とその要因分析を実施してきた。これに関連して被災予測とリスク管理・責任分担に関連した論文を発表した。 本年度は、計画当初からの継続課題である、橋を中心とする土木構造物と建築物の間の要求性能の違いを体系化して、両者を包含する一般的な設計基準を構築し、試案の形でまとめた。これは論文形式にはなりにくい素材であるので、当面報告書に原案を掲載し、今後利用していくための資料として位置づけることを計画している。 具体的な事例研究として、橋脚形式(1本柱、門形ラーメン)の違いによる設計時の支配条件の相違と、それらが挙動に及ぼす影響について、信頼性のモデルをあてはめる考察を進めてきたが、年度末の段階で一定の成果を論文化出来たので、報告書に掲載した。 さらに、環境作用による腐食などの要因を限界状態の中で取り上げることの重要性が増していることに着目して、上部構造の信頼性の経時変化と維持補間隔の合理化、またヘルスモニタリングの簡略な実施方法、ニューラルネットワークの利用による損傷位置の推定などについても一定の成果を得たため、これらも論文化をはかるとともに、報告書に掲載した。 本研究のもう一つの目的である、システム信頼性の構造物ならびに構造システムへの適用についても、検討をさらに深めた。とりわけ後者の応用例については、ネットワークシステムの構成要素としての構造物の信頼度を、その重要度に応じて階層化する試みを行い、論文発表している。 3年間の研究期間の間に、限界状態の扱い・設計基準の合理化・システム信頼度の応用のそれぞれについて研究対象が広がりをみせたため、最終段階でも幅広い成果をまとめることが出来、報告書にも反映している。
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