研究概要 |
鉄筋コンクリート(RC)部材の長寿命化や耐久性が議論される中、多くの既設RC部材がひび割れを有する状況の中で供用されている。本研究では、ひび割れ等の損傷を有する鉄筋コンクリート部材の耐荷性能について、実験と有限要素解析により調査した。 実験は、RC梁部材に部材軸方向に引張力を作用させ、部材軸に直交する初期ひび割れを誘発し、部材のひびわれによる損傷を再現し、この後、部材を4点曲げ試験する事で、曲げ、せん断耐力を評価した。この時、軸力レベルをコントロールすることで、部材の損傷度をコントロールした。実験結果から、部材のせん断耐力が初期ひび割れにより影響を受け、初期ひび割れの状況によっては、せん断耐力が上昇する場合があることが明らかになった。(これについての研究成果は、国際会議(CSSCEおよびCONSEC)等で発表した。) 解析は、退化シェル要素および3次元ソリッド要素を用いた弾塑性有限要素解析を試みた。それぞれの手法は、複鉄筋長方形梁による実験をモデル化することで、その精度を評価し、初期ひび割れを有する梁を、ひび割れの程度や鉄筋量をパラメータとして解析を行った。 実験や解析の結果からは、初期ひび割れを有する部材は、初期ひび割れのない部材に比較して、たわみは大きくなるものの、部材のせん断耐力に対しては影響は小さく、むしろせん断耐力が増大する場合があることが明らかになった。(これらについての研究成果は、国際会議(CSSCE)等で発表した。)また、解析手法の応用として、40年供用したプレートガーター床版の解析を行った(コンクリート工学年次論文集)。 また、損傷を有するRC柱部材の補強方法に関して、ソリッド要素を用いた有限要素法によるシミュレーション解析を試みた。(これについての研究成果の報告は、国際会議(DRRCAG),構造物の衝撃問題シンポジウム論文集等に発表した。)
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