構造物の減衰性能を向上させるための一つの方法として相互連結法を、三つの構造物の連結に拡張して、その妥当性と有効性を提示するとともに、模型実験を行い調整理論の妥当性を示した。すなわち、三つの構造物を連結部材(ばね・ダンパーから構成される)を用いて相互に連結して、構造物の自由振動の1次モードに対する減衰性能の向上をはかる方法を提示した。構造物は離散系システムとして取り扱った。連結部材の近似的調整法の手順は次の通りである。初めに、三つの構造物のモーダルマトリックスを用いて、連結された三つの構造物の運動方程式から1次モードに対するモード方程式を求めた。このモード方程式が三つの質量と五つのばねから構成される3自由度系の運動方程式と等価になることを示し、この3自由度系の三つのモード減衰比を共に等しく最大とする連結要素の調整条件を明らかにした。この調整条件から三つの構造物の低次モードのモード減衰比を等しく最大にする連結部材の調整条件を近似調整法として提示した。この調整法の妥当性を、相互に連結された三つの模型ラーメンについて、減衰自由振動実験を行い、実験的に妥当性を明らかにした。ついで、この近似調整法を相互に連結された三つの並立した塔状構造物に適用して、調整法の妥当性と連結部材の有効性を示すとともに、相互連結による減衰性能向上に対する適用限度をも明らかにした。 また、これまでに提示してきた二つの構造物の相互連結による減衰性能向上法の精度改善の手法を提示した。すなわち、モード座標系にモデル化する際に、自由振動変位を2次モードまでの和で表し、連結構造物を4自由度系として取り扱った。4自由度系における連結要素の調整法を明らかにして、これにより構造物の連結部材の調整法を提示した。二つの並立した塔状構造物および立体ラーメンに対する適用例からその妥当性と有効性を示した。
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