本研究では、1995年兵庫県南部地震の際のいわゆる「震災の帯」が出現した背景をより根本的に検討するために、山側岩盤部および海側液状化部の動特性がどのように相互に影響しあうのか、さらに入力強度と地盤堆積の不整形性との相互の兼ね合いが「震災の帯」をどのように形成していくのか、を解析の目標に立て、入力には神戸ポートアイランド-32mで記録された地震波を用い、地盤モデルとしては、基本地盤モデルと神戸地盤モデルについて非線形有効応力解析を行った。その計算プログラムには、開発した吸収境界を設置したが、以下のようなことが解明された。 1.先ず、表層地盤モデル内で、人為的な境界よりの反射波を抑えるための吸収境界条件を開発・導入して、小領域計算を可能とし、その有効性を示した。 2.不整形な地盤構成では、液状化による地盤剛性の急変のため、表層地盤の動特性の1つである固有周期の伸びおよび加速度周波数伝達関数の劣化とその非線形性が顕著に現れるようになる。すなわち、地点ごとの周波数応答特性がローパスフィルターに変身していくことが分かった。 3.隣接する地盤の境界面付近の動特性には、両地盤の硬軟度が大きいときは、硬い地盤の影響が強く現れ、逆に両地盤の物性が近いと双方の影響が現れる。 4.入力の増大につれ、表層地盤の海岸埋立部では液状化の進行が、加速度応答の低下を招き、そのため内陸部の地層境界面露出部(不整形部)あたりに加速度応答が集中する強震帯が現出する。この"震災の帯"現象は、神戸の地盤と最大加速度5.4m/s^2の神戸地震波との組合せという必然性があって得られたものであるが、地盤構成は沿岸域のどの都市にも見られることから、他都市でも再現しうるものであることが分かった。
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