研究概要 |
条件付確率にもとづく確率場の情報更新理論について解析的手法と数値シミュレーション手法の検討を行った. 前者にはカルマンフィルタ,拡張カルマンフィルタなどがあり,基本的にガウス性,線形確率場に対する更新理論と位置づけられる.ガウス性および線形性の条件のもとでカルマンフィルタは,条件付平均値および条件付共分散を求めるアルゴリズムである.特に線形性およびガウス性の場合は,確率密度関数が平均値および共分散により完全に記述できるので,確率密度関数自体を更新することと等価であり,得られる結果は理論解となる.しかしながら,既往の研究における解析的非線形フィルタは,システムノイズおよび観測ノイズをブラウン運動またはガウス性白色雑音としてモデル化し,非線形関係の支配方程式を条件付推定値近傍で線形化し,近似的にガウス性確率場に対する理論を適用している. 後者のBootstrap filter/Monte Carlo filterは,線形,ガウス性という条件に拘束されない万能型の情報更新理論である.ここで,Bootstrap filter/Monte Carlo filterは,計算機による数値実験から得られるサンプル実現値をもとに確率密度関数を表現するという考え方に基づいている.すなわち,予測分布に関しては,状態方程式をもとに十分な数のサンプル実現値をシミエレートし,フィルタリング分布に関しては予測によって得られたサンプル実現値を,それぞれの発生の尤度に比例する重みをもとにリサンプリングすることで,確率密度関数自体を更新するアルゴリズムである. 条件付確率密度関数をもとに,解析的非線形フィルタとBF/MCFのアルゴリズムによる情報更新について基本的な考察を行い,非線形動的システムの状態推定問題に,拡張カルマンフィルタおよびBF/MCFを適用した.
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