重金属による地盤環境の汚染機構を解明するため、銅イオン(Cu^<2+>)および鉛イオン(Pb^<2+>)を用いた室内カラム試験を実施し、関東ロームに代表される火山灰質粘性土を対象として両イオンの土組成への吸着特性と間隙中での移流分散特性について検討した。カラム試験による吸着実験では、イオン濃度1mg/L〜20mg/L、流出間隙体積相当量(1PV)のイオン溶液を試料土に自然浸透させ、浸透前後のイオン濃度差より吸着量を求めた。実験より、重金属イオンに対するロームの吸着特性は、溶液の平衡濃度の上昇につれて吸着量が減少する強い非線形性を示し、Freundlich型またはLangmuir型の吸着関数で表現しえることが示された。比較のため実施した豊浦砂に対する実験結果から、ロームは砂の約10倍〜20倍の吸着量を示し、さらに吸着量は土の初期含水状態に大きく左右されることが示された。 次に、重金属イオンの土中における移流分散特性を把握するため、流れ分析に基づくカラム試験を実施した。浸出溶液の累積間隙体積に対するイオン濃度の破過曲線を求め、上記の吸着関数を取り込んだ移流-分散方程式の理論解と重ね合わせて分散係数および遅延係数を評価した。その結果、分散係数は浸透溶液の実流速に比例するD_L=A_L・Veの線形関係が確認され、豊浦砂における分散長はA_L=0.1〜0.25(cm)、ロームについてはA_L=2〜4(cm)の値が得られた。また、遅延係数はR=3.5〜13.0の値を示し、特に銅イオンに対しては吸着による遅延効果が著しいことが分かった。 最後に、実験により得られた吸着および分散特性を取り込んだ地盤環境汚染シミュレーションプログラムを作成し、工場跡地や産業廃棄物処分場における表層地盤(ローム層)から帯水層までの多層地盤に対し、浸出重金属による地盤および地下水汚染の広がりを再現し、汚染の進行の具体的イメージを明らかにした。以上の研究成果を成果報告書としてまとめ報告した。
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