研究概要 |
1.1984年来実施してきた阿武隈川河口地形変動調査資料を再整理し,河口砂州変動を長・中・短期別に考察し,河口土砂循環を総合的に明らかにした.すなわち,河口は河川から排出される土砂のポケットとしての作用があり,洪水時の土砂流出,河口砂州・河口テラス間で土砂滞留・相互作用,沿岸への土砂供給が異なる時間スケールで並行して進んでいることを明確にした. 2.阿武隈川源流域から河口までの流出解析・土砂解析法を完成させるとともに解析事例を増やし,解析法の適応度の向上を行った.特に表面流出と地下水流出を統合したモデルを流域規模で開発できたことは意義深い.最終的に阿武隈川から沿岸部への土砂供給量を定量的に評価した. 3.沿岸部での主要構造物周辺での地形変化・土砂堆積量・上砂粒度分布等の解析結果を総合化し,沿岸部での土砂循環を定量的に明確にした.通常言われているように,仙台湾沿岸で北向き漂砂を示す地形の特徴が明瞭に認められ,また,それが人為的作用で不自然に阻害されていることを明らかにした. 4.上記の結果を総合し,仙台湾海岸での土砂動態・土砂収支を定量的に評価し,研究立ち上げ時の目標に到達した.すなわち,仙台湾海岸では,福島海岸からの供給土砂,沿岸漂砂,河川排出土砂が,往時は平衡していたが,近年,この平衡が著しく崩れていることを定量的に明らかにした.また,河川からの砂利採取が極めて多いことを,他の流送土砂量との比較で明らかにした. 5.以上の結果より仙台湾海岸・阿武隈川流域における土砂総合管理のあり方について考察し,現状の土砂環境からは,動的平衡海岸から静的平衡海岸に向けての構造物設置,土砂の人工的移動を組み合わせる方法が有効であることを指摘し,提言をまとめた.
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