研究概要 |
本研究の目的は,海岸域と外洋域を結ぶ重要な海域でありながら,これまでその実態解明がほとんど進んでいない水深10〜200mの大陸灘海域(Coastal Buffer Zone)に対して,それが広域土砂収支や沿岸水環境形成に果たす役割を把握するために,CBZの流れ(沿岸境界層)の空間構造を現地観測から明らかとし,それに基づいて広域漂砂モデルや広域沿岸水環境モデルの構築を試みることにある.今年度は,まず昨年度実施した鹿島灘における現地計測(観測期間:1999年7月中旬〜9月末の約2ヶ月間,観測内容:(1)係留ブイに観測ステーションによる流動・水温・塩分・クロロフィルa量の長期連続計測,(2)観測船を用いた流動・栄養塩・動植物プランクトンの空間構造精密計測,(3)超音波ドップラー流速計を用いた海底境界層精密計測)のデータ解析を押し進め,a)急激な黒潮流路にともなう沿岸流動の応答や黒潮前線から波及する前線渦が沿岸環境に与える影響なメソスケールの外洋変動が沿岸域に与える影響を衛星リモートセンシングのデータもあわせることによって明らかにした.さらに今年度は,昨年度の研究を発展させる形で,開放性沿岸域における低次生産を中心とした物質循環を明らかにするために,栄養塩,クロロフィルa量の年間変動計測を実施した.その結果,開放性沿岸域の物質循環の特徴が,i)浅海域(水深20m以浅),ii)陸棚海域(水深20m〜100m),iii)外海域(水深100m以上)という領域ごとに大きく異なっていることを示し,大陸棚海域は春季〜初夏にかけて外海影響によって栄養塩場が支配され,秋季は陸水影響によって支配されることなどを観測結果に基づいて示すことができた.
|