研究概要 |
日本の河川の多くは複断面蛇行河道と呼ばれる一般に堤防と低水路が個々に蛇行している形状となっており,高水敷上の水深や蛇行度などといった水理特性によって洪水の流れ方が変化し,河道全体の抵抗や河床形状が変化することが従来の研究から示されてきた.研究代表者らは,複断面蛇行河道の流れと河床変動を解析する数値解析モデルを開発し,模型実験結果と数値実験結果を比較検討してきた.その結果,高水敷の粗度や低水路幅の影響が個々の現象に大きく影響を及ぼし,流れと河床形状の特性を変えていることを見出した.研究代表者らが開発した数値モデルを用いて,高水敷や低水路緒量(幅,水深,粗度,蛇行度等)の違いに起因した流れや抵抗特性,河床形状の変化を検討し,複断面蛇行河道における流れ場や河床形状を決めるメカニズムとその支配量を明らかにし,このような流れ場の特性を統一的に記述できるようにする. 平成11年度は,相対水深と高水敷及び低水路の粗度の違いが複断面蛇行流路の流れと河床変動に及ぼす影響について検討し,複断面蛇行流路において流砂量の縦断変化が卓越するとき河床形状は単断面的蛇行流れの形状を示し,横断的な変化が卓越するとき河床形状が複断面的蛇行流れの形状を示すことが明らかとなった.実験と解析の比較から,複断面的蛇行流れにおいて河床付近で流速が集中している所では,実験における流砂量が解析よりも増大しており,平均流とせん断力の関係から定まっている平衡流砂量式の適用に問題がある可能性が大きいことが分った. 平成12年度は蛇行度を変えた模型実験及び数値解析を行った.特に相対蛇行度と蛇行の絶対曲率が小さい場合には,流れの直進性が増大するために単断面流れ,複断面流れの場合にも内岸に最大主流速線が現れる複断面的蛇行流れになり,河床は縦断的に連続して洗掘されることを新たに見出している.また,種々の条件で数値解析を行い,これまで実験を基に作成されていた流れ場の領域区分図の補間を行った.堤防と低水路が蛇行する複断面蛇行流れでは流れの集中・発散によって流れの向きが堤防の線形だけで決まらないことから,浮子を用いた現地観測の流量精度について数値実験的に検討し,観測断面の位置の選定によって最大で15%程度の流量観測誤差が生じる可能性があることが分った.
|