降雨や潮位変化などによる砂浜背後の地盤内水位と海水面水位の不連続は、波打ち帯の漂砂に対して大きな影響を与えると考えられる。前浜砂層内への浸透流を含めた斜面上の波動場を、非線形長波方程式を基礎方程式とし、遡上端を移動境界とした数値モデルによって解析した。波打ち帯では砂地盤内への浸透流は地盤上端面でtransientな水位変動が載荷されることになるが、この非定常浸透流をDickerの理論に基づいて解析した。計算は、わが国の砂浜海岸の現実的な地形形状・底質形状の下で行った。すなわち、細砂・粗砂・小砂利を代表する3種類の粒径を設定し、それに対応する透水係数を与えた。解析の結果、斜面上の水粒子速度に与える浸透流・滲出流の影響はきわめて小さいが、干出と没水を繰り返す波打ち帯においてはその影響は必ずしも無視できないことがわかった。 次に、得られた水粒子速度場を外力とした時の、斜面上に置かれた単一砂粒子に対する移動限界掃流力、および岸沖漂砂量に関して、砂粒子に作用する流体力と移動抵抗力の力学モデルに基づき解析的表示式を導出した。それらの諸量に及ぼす砂地盤内への浸透流ならびに砂地盤内からの滲出流の影響を定量的に検出した。その結果、局所的岸沖漂砂量の及ぼす浸透・滲出の影響は、波動による水粒子速度に対する浸透・滲出流の比が20%と大きな場合でも、たかだか5%に過ぎないが、1日あたりの漂砂量に換算すると遡上端付近では、現実に生起する条件下での試算で、20m^3/dayの差異が浸透流によって生じ、海浜変形を議論するにあたって大きな影響があることが明らかになった。
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