本研究では、乾燥・半乾燥地域での地面蒸発-塩類集積の関係を、日常的な現象である大気水蒸気の凝結に着目して、砂層による蒸発実験、中国北西部砂漠地での現地気象観測(HEIFE)で得られたデータの解析とその数値シミュレーションを通して考究した。 1.実験では、上記砂漠地の砂丘砂を気乾状態にした砂層(CaseA)、地下水面を浅く設定した細砂層(珪砂:CaseB)に、大気の日変化を模擬して、昼間では湿潤空気(湿度65%)と熱照射(550W/m^2)を、夜間では乾燥空気(湿度20%)を周期的(1〜4日)に与えた。気温は不変で25℃とした。CaseBで用いた水は高濃度のNaCl水溶液である。CaseAの場合、湿潤段階では、大気水蒸気は深さ5cm〜10cm程度まで侵入して、凝結し、乾燥段階では、最初深さ5cm付近現れた蒸発域は時間と共に降下した。蒸発で生じた水蒸気は、最初、大気側に多く輸送され、残部は下方(〜15cm)に運ばれ凝結したが、時間と共に両者の水蒸気フラックスは同程度となる。(2)蒸発域の走時曲線は気象変動周期に関係なくほぼ重なる。また、湿潤・乾燥段階を重ねるに連れて、砂層は湿潤化する方向に向かう。(3)10数程度の気象変動サイクル数の相違による塩類集積の影響は明確ではない。他方、CaseBの場合、(1)乾燥段階の蒸発量は湿潤段階の凝結量の10倍程度となり、その差は地下水面より供給される。(2)蒸発域より浅い部分で土壌水は飽和濃度となり、塩析出も見られたが、それより深い部分での濃度は指数低減した。 2.開発した大気一土地系での熱・水分・塩分移動のモデルの数値計算はHEIFE観測データの再現に成功した。これより、(1)大気水蒸気の凝結は平素夜間に生起しているが、この量は日蒸発量に比しかなり小さく、従って、蒸発のソースは大半が降水となる。(2)現地で観測された深さ数10cmでの土壌塩分濃度のピークは降雨浸透-土壌水分蒸発の相互作用によりことが分かった。
|