河川災害に対する住民対応行動の形成構造とその適切な誘導に関する研究

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11650539
• 研究機関: 群馬大学
• 研究代表者: 片田 敏孝 群馬大学, 工学部, 助教授 (20233744)
• キーワード: 避難行動 / 洪水ハザードマップ / 災害教育 / 災害伝承 / 災害情報伝達 / 被害軽減行動 / 災害弱者 / シミュレーション

研究概要

河川洪水時の避難行動を促すための方策について、本年度は、昨年度に引き続き、まず、洪水ハザードマップに関する研究を継続した。ここでは、地域の地理的条件や過去の災害履歴のもとで効果的な洪水ハザードマップを作成するための条件を明らかにするとともに、作成された洪水ハザードマップに対する自治体の自己評価の実態を明らかにした。これらの成果により、地域の特性を活かした洪水ハザードマップの作成方法に対して具体的な提言を行うことができ、それによって、国が整備している洪水ハザードマップ作成マニュアルの改訂が行われた。
本年度において特に成果があがった研究は、住民の災害に対する認識の構造を明らかにし、その下での災害情報提供のあり方を検討した研究である。この研究では、洪水災害に対する住民のリスク・イメージの形成構造を明らかにするとともに、それらの認識が災害時の住民の対応行動に与える影響を明らかにした。また、災害情報の住民理解の構造を明らかにし、効果的な避難行動を誘導するための災害情報提供のあり方について、具体的な提言を行うことが出来た。
本年度はさらに、災害時の住民に対する情報伝達が効率的に行われるための情報伝達メディアの構成や、伝達タイミングを検討するための、災害情報伝達シミュレーションモデルの開発も行った。このシミュレーションモデルは、コンピュータ上に展開される実際の地理情報空間のなかで、住民にどのように災害情報が伝達されるのかを再現するシステムである。これによって、災害時の情報伝達環境の事前検討が可能になっており、既に実用システムとしての運用も行われている。

研究成果

• [文献書誌] 片田敏孝: "地域的条件を考慮した効果的な洪水ハザードマップのあり方に関する研究"河川情報研究. Vol.7. 7-16 (1999)
• [文献書誌] 及川康,片田敏孝 他: "住民の洪水危険度認識の形成要因とその洪水対応行動への影響"河川技術に関する論文集. Vol.6. 255-260 (2000)
• [文献書誌] 片田敏孝: "河川洪水に対するリスク・イメージの構造とその避難行動への影響"河川技術に関する論文集. Vol.6. 261-266 (2000)
• [文献書誌] 片田敏孝: "災害対応型河川GISのための災害情報伝達シミュレーション"河川技術に関する論文集. Vol.6. 273-278 (2000)
• [文献書誌] 片田敏孝: "GISを用いた災害情報伝達のシミュレーション分析"土木情報システム論文集. Vol.9. 49-58 (2000)
• [文献書誌] 片田敏孝: "風水害とその対策"判例地方自治. No.206. 94-97 (2000)
• [文献書誌] 浅田純作,片田敏孝 他: "洪水避難に関わる情報提供とその住民理解に関する研究"土木学会水工学論文集. 第45巻(印刷中). (2001)
• [文献書誌] 及川康,片田敏孝 他: "山地中小河川流域の豪雨災害に対する住民の危険度認識と情報理解に関する研究"土木学会水工学論文集. 第45巻(印刷中). (2001)
• [文献書誌] 片田敏孝: "洪水ハザードマップの作成状況と作成自治体による事後評価"土木学会水工学論文集. 第45巻(印刷中). (2001)