我国では、毎年各種の交通事故対策が実施され、効果評価が行われているが、実務上は様々な分析上の課題が残されている。このような問題点を踏まえ、本研究では従来提案されてきた主な評価手法について、既存収集データに基づいて実際に適用するという過程を通じて各手法の特徴・適用上の制約等を整理し、実務的にも実行可能な交通事故対策評価要件を整理することを目的に検討を行った。 (1)評価手法適用性検討のための事故及び関連情報の整備:各手法適用性検討のためには、事故発生のランダムネスの影響を検討できる多年度にわたるデータの整備が必要である。こうしたデータベースを幾種類か用意し、分析用データファイルとして整備した。 (2)事故データの収集期間を増すことがどの程度安定した効果評価ができるかを検討した。また必要サンプル数についても考察した。評価対象期間の長期化は、事前の事故発生状況がランダムである場合により有効であり、事故データの蓄積は重要な作業といえる。 (3)交通量に時系列変化の影響を適切に分析上分離することが肝要であり、対応法について実データに基づく検討を行った。 (4)比較グループを用いた分析方法(With/Without Comparison)の適用を介して、評価期間を3年程度取らないと結果が有意とならない例も知られた。評価地点の危険度からの追試が必要である。 (5)危険箇所の抽出基準値の設定は実務レベルでは重要な課題である。抽出基準値を変えて効果評価の状況を比較分析することを通じて、その特性を取りまとめた。
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