交差点付近のビル屋上に設置したビデオカメラにて歩行者交通流を撮像し、その映像から画像処理によってある瞬間の横断歩道上に散開した歩行者の空間的な分布を得る。次に、その1コマの分布パターンをエントロピーによって定量化し、歩行者交通需要をマクロに推定する手法をこれまでに提案した。 本研究では、そのエントロピーの変動に感応して歩行者青信号時間を調整する新たな歩行者交通信号制御方式を提案した。これは、エントロピーの値によって歩行者交通需要を推定し、毎サイクルその値に応じて歩行者青時間を最適に調整する制御方式である。本方式を適用することによって、不要な歩行者青時間を排除でき、特にスクランブル交差点ではそこを起点として延伸する自動車交通渋滞の緩和が期待できる。なお、歩行者交通需要が減少し青信号から青点滅信号へ切り替える際のエントロピー閾値について実画像処理結果およびシミュレーション実験結果を基に検討した。その結果、通常の横断歩道では2.5bits、スクランブル交差点では3.0bitsが最適なエントロピーの閾値であることが判明した。 次に、交通信号制御の最小周期は1秒であることから、より処理時間の掛からない簡易な画像処理・エントロピー計測手法を提案した。その結果、PentiumIII600MHz程度のCPUを搭載したパーソナルコンピュータと画像処理ボードにて、画像処理およびエントロピー算出を1秒以内で完了できることが示された。 さらに、画像処理によって歩行速度の極端に遅い歩行者(交通弱者)を検出し、歩行者交通需要が途絶え、エントロピーが減少した後も、その歩行者が安全に横断できるだけの時間を青点滅信号の延長によって確保する機能を付加した歩行者交通信号制御方式も提案した。
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