対極に対して多孔性の作用電極を複数枚配置する新しい多重電極装置を作製し、装置内の電荷輸送メカニズムおよび低濃度の重金属(Cu^<2+>)イオンを含む溶液の処理速度について実験的検討を行った。その結果、以下のような知見を得た。 1 地下水や河川水等の比較的に低濃度(導電率が1mS/cm以下)の溶液を多重電極によって電解する場合について、液本体中の電荷輸送速度をNemst-Einstein式に従って解析したところ、電荷は多段解離する炭酸イオンやリン酸イオンによって輸送されることが示された。また、この電荷輸送は、特に中性域において低電圧で大きな電流を流す場合に有効であると考えられた。 2 メッシュ状陰極よりなる多重極装置を用いることにより、比較的に低濃度(数 mg/L程度)の銅イオンを排水準(3mg/L)あるいは飲料水基準(1mg/L)以下まで効率よく析出・除去することが可能である。 3 この際の銅析出速度は、通電量の増加につれ増加するが、ある限界の電流値以上になるとほぼ一定値となった。この限界電流は電極槽内の攪拌状態に影響され変化した。本研究では限界電流と装置内液流速との関係式を得た。 4 多重電極システムは、銅イオン濃度が低い操作条件あるいは電流値が限界電流以上の高電流条件において、従来の単極システムに比べて優れた処理性能を示す傾向にあった。なお、除去された銅イオンは、極性を変換することによって容易に回収することができる。
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