重金属イオン、硝酸イオンおよびリン化合物の処理が可能な3つの多重電極プロセスを提案した。また、各プロセスの水処理性能について、実験的並びに理論的解析を行い、設計・操作に関する基礎的知見を得た。 先ず、重金属イオンの除去に関して、多重電極系を用いることにより、数mg/lのCu^<2+>イオンを従来プロセスより効率良く除去できることを実験的並びに理論的に示した。すなわち、電極の多重化により電流密度を限界電流以下に抑えることができるため、水電解反応に消費された電子が銅イオンの還元に効率良く使われ、その結果電流効率が向上することを明らかにした。また、粒子状の炭素電極を多重化することによって、これまで筆者らが提案していた生物膜電極槽(BER)の性能を数倍以上に向上できることを示すと共に、高速化は経済的な水処理操作を行う上でも重要であることを示した。 また、閉鎖性水域における富栄養化の原因物質であり、資源枯渇が危倶されているリン化合物を薬剤無添加条件下で電場および電極反応により、被処理水中から分離除去する水処理法の可能性を示した。ここで、効率的なリン除去を行う上で、多重電極システム内に形成されるアルカリゾーン及び対極近傍の酸性ゾーンが重要である。なお、本法は「電場を用いた被処理水からのリンの除去方法」として特許出願に至った。なお、本研究で扱った以外の電気化学反応及び電極材材料を多重電極として合理的に組み込むことができれば、さらに多くの新規水質変換プロセスの創出が可能であると考えられた。
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