環境中の農薬の動態は微生物の生息場所や生息条件等の影響も受けるもので一様に扱うことは難しいが、ある時点における環境中の農薬濃度は、農薬分解菌による作用のほか、フミン質への吸着とフミン質の分解の三者の関係によって決まり、その関係におけるキーマテリアルはフミン質であるとの見方で現象を切り取ることもできる考えられる。そこで本研究では、フミン質をキーマテリアルとしてとらえ、環境中での農薬の動態を記述することを目的としている。言い換えれば、農薬分解菌やフミン質分解菌との作用を通して土壌中並びに水環境中での農薬の動態にフミン質はどの程度関与しているかを明かとすること、ともいえる。 本年度は農薬やフミン質の微生物分解に関する検討に先立ち、フミン質への農薬吸着についての検討をおこなうことを計画していた。水への溶解度が異なる農薬4種(クロロピリホス、シマジン、フェニトロチオン、メチダチオン)を選び、弱塩基性陰イオン交換セルロースを媒体として使用する方法により、タイプの異なるフミン質への農薬の吸着ならびに脱着に関する検討を行なった(詳細はIHSS10(2000年7月)にて発表予定)。各農薬の吸着に関してみると、実験より求められた分配定数は農薬の溶解度とよい相関性があり、それが小さい農薬ほど分配定数は大きくなった。これはこれまで報告されている結果と同様であった。またこれのフミン質のタイプによる差は小さかった。一旦フミン質に吸着した農薬の脱着実験からは、溶解度が高い農薬の場合は簡単に脱着しやすいことが明かとなった。また比較的溶解度が小さい場合も、脱着後の分配係数は脱着前のそれと大きく異ならないことがわかった。
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